当院では妊娠11週以降で胎児超音波検査を行った上でNIPTを実施していました。
NIPTは妊娠10週から可能ですが、NIPTの採血をする前に胎児超音波検査(胎児ドック)を行った方が妊婦さんには利益があるという考えから、1週間待っていただき妊娠11週からのNIPTとしていました。
10 week scanはNIPTを希望される方へのみ実施しています
当院ではより高解像度での評価を可能にするため、3D/4D経膣超音波プローブを導入しました。
妊娠10週からNIPTを希望される方へは、その超音波プローブを使用して超音波検査(10 week scan)を行った上でNIPTを提供させて頂きます。
当院でのNIPTを希望される方にのみ実施となり、それ以外の方へはご対応しておりませんので、予めご了承ください。
NIPTの前に超音波検査を受けましょう
妊娠10週であっても以下の理由で、NIPT前に超音波検査を行うことをお薦めします。
1. 本当に妊娠10週の大きさになっているかどうかを確かめるため
将来胎盤となる絨毛細胞由来の遊離DNA断片を利用しているのがNIPTの検査になります。
絨毛細胞由来の遊離DNA断片は妊娠7週から母体血中に検出されることが知られています。
しかし、NIPTで適切な検査結果を得るためにはある程度の絨毛細胞由来の遊離DNAが母体血中に含まれている必要があります。
十分な量の遊離DNAが含まれているのが妊娠10週以降とされており、そのため妊娠10週以降でNIPTは検査されています。
特に自然妊娠の場合では最終月経から計算された分娩予定日と実際の分娩予定日はずれていることがあります。
そのため、妊娠10週と思って検査を受けても実際には妊娠9週や8週だった場合、母体血中の絨毛細胞由来の遊離DNA量が少なく結果が出ないということがあります。
その場合は数週間待って再検査を受ける必要があります。
採血前に胎児の計測をすることで、このようなことは避けることができます。
胎児の計測は一般的な産科診療で行われることですので、容易に行うことができます。
2. 胎児心拍の有無を確認するため
妊娠10週前での流産は比較的多く見られます。特に染色体異常を持つ胎児では流産の頻度はより多くなります。
万が一、心拍が止まってしまっていた場合は稽留(けいりゅう)流産という診断になります。
その場合、流産の原因として染色体異常があったのかどうかを知りたい希望がありましたら、遺残絨毛を検査に出すことで診断ができる可能性があります。
NIPTを行う必要はありませんし、遺残絨毛の染色体検査は、一般的には、NIPTより安価に提供されています。
心拍確認は産科診療で基本的なことの一つであり、超音波検査ですぐに確認できます。
3. Vanishing twin(双胎妊娠で片方の児が流産となっている状態)ではないかどうかを確認するため
双胎妊娠で、胎児(胎芽)の片方が流産となった場合、偽陽性の原因となるためNIPTは推奨されていません。
片方の胎児(胎芽)の心拍が止まり、一人の胎児だけが成長していくことは、vanishing twinと呼ばれます。
この場合、心拍が止まった胎児(胎芽)の方に染色体異常があった場合、その胎児(胎芽)の絨毛にも染色体異常がある可能性があります。
そのような状況では、成長している胎児に染色体異常がなかったとしても、染色体異常があった胎児(胎芽)の絨毛細胞の影響で偽陽性となることがあります。
そのため、vanishing twinの状態ではNIPTは奨められません。
vanishing twinも一般的な超音波検査の範囲で診断することができます。
4. 構造学的な異常がないかどうか確認するため
妊娠10週であっても、大きな構造学的異常はわかることがあります。
構造学的な異常がある場合、11週以降で診断的検査(絨毛検査もしくは羊水検査)を行うことが推奨されます。
構造学的な異常があった場合、NIPTで対象となっている遺伝学的症候群以外の原因があるかもしれないからです。
そのため、限られた染色体異常をスクリーニング検査であるNIPTで確認するだけでは不十分であり、網羅的で診断的な遺伝学的検査を行うことが適切と考えられています。
専門的な胎児診療の技術が必要
胎児の構造学的な評価を行うためには、適切なトレーニングが必要です。
また妊娠10週での超音波検査に関しての知識が必要となってきます。
そのため、これに関しては一般の産科診療の範囲を超えていると考えられます。
NIPTの前の超音波検査から必要な検査を絞る
1−3に関しては胎児超音波検査のトレーニングを受けていなくとも、産婦人科医師であれば一般的な診療の中で確認することができ、また、検査時間も数分かかる程度です。
オーストラリアから2020年に出された論文では、NIPTクリニックを受診した10人に1人が事前の超音波検査によりNIPT以外のマネージメントに変更されたという報告がされています(*)。
このような医学的根拠があり、なおかつ簡便な検査で1−3の事柄に関しては観察できるわけですから、NIPTを行う前に超音波検査をしない理由はないと思います。
検査をしないことで、本来であれば支払う必要のない高額な検査費用を妊婦さんに負担させることは避けるべきです。
当院では妊娠10週目でのNIPTの前に10 week scanを実施
当院で妊娠10週台にNIPTを希望される方は、10 week scanを受けていただき、その上でNIPT検査を受けていただきます。
検査は同日に行うことが可能です。
当院のアーリースキャンでは上記の1−3以外に構造学的な評価も行います。構造学的な評価は経膣超音波で行います。
ただし、妊娠10週では胎児の大きさはまだ小さく、妊娠11週から13週の超音波と比較しても確認できることは限られます。
そのため、NIPTの結果が返ってくる12週頃に再度、胎児超音波検査(FMF精密初期胎児ドック)を受けることをお奨めします。
もしくはNIPT検査の時期を遅らせて、11週以降でFMF精密初期胎児ドックとNIPTを受けられることをお奨めします。
ご予約について
ご予約につきましてはインターネット予約システム内の「初期胎児ドック」の項目よりご予約ください。
費用のご案内
※全て税込価格となります。
妊娠10週でNIPT
10 week scan + NIPT | 121,000 |
---|---|
10week scan + NIPT + FMF精密初期胎児ドック | 143,000 |
10 week scan の結果、NIPTを行わなかった場合 | 11,000 |
妊娠11週以降でNIPT
FMF精密初期胎児ドック+NIPT | 137,500 |
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※上記の金額以外に、診察料(初診料または再診療)が追加されます。
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