卵巣腫瘍は見逃されがち
卵巣腫瘍は、女性の一生のうちに5~7%の確率で発生すると言われています。
一般に腫瘍が小さい場合は症状を感じないことが多く、日常生活に支障を来すことはあまりありません。
子宮がん検診や内科などを受診した時に、偶然卵巣嚢腫が発見されることもあります。
スカートやパンツのウエストがきつくなったことに気付いて受診し、診断される場合もありますが、太ったからと思い込み、そのままにしてしまう人も多いようです。
巨大腫瘍では症状が出現、手術の可能性も
卵巣腫瘍は、直径20cm以上と巨大になることもあります。
腫瘍が大きくなると、膀胱や直腸を圧迫し頻尿や便秘を認めたり、リンパ管の圧迫や静脈の還流障害(下肢の末端から心臓への静脈血の戻りが悪くなる)により下肢の浮腫などを生じます。
腹水が溜まってくると腹囲はさらに増大し、妊婦さんのようにおなかが前に突き出してくることがあります。
また、卵巣腫瘍の付け根部分がねじれたり(卵巣腫瘍茎捻転)、卵巣腫瘍の一部が破綻した場合、激しい下腹痛が出現し、緊急手術を要することもあります。
診察
悪性腫瘍ではないかの検査
診察では問診、内診、超音波検査、MRI、腫瘍マーカーなどで悪性腫瘍かもしくはそれ以外のものであるのかを推定していきます。
小さい卵巣腫瘍は内診だけでの診察では発見が難しこともある為、婦人科検診では経膣超音波検査を加えることで発見される確率は増えるかもしれません。
また、ヨーロッパを中心とした研究グループであるIOTAからされた報告によると、超音波検査にカラードップラーなど加えることで診断率が上昇すると指摘されています。
超音波検査で明らかに良性であるといえない場合はMRIを使用した精査が必要な場合もあります。
また、採血検査で腫瘍マーカーを調べることで診断の補助的な手掛かりとなることもあります。
定期的な婦人科検診を受けましょう
卵巣は完全に腹腔内にある臓器であり、生検といって試しに卵巣組織を取ってきて病理診断をすることは、腹水が著明に溜まっている場合を除き、できません。
そのため、主に画像検査で腫瘍の種類を推定して方針を決めていきます。したがって、手術をしない場合は病理診断はできず、診断精度には限界があります。
現在、卵巣検診の卵巣癌早期発見に対する効果は明らかではありません。
一方、最近は遺伝性の乳癌卵巣癌症候群なども注目されています。
身近な方に婦人科癌を経験された方がいる場合は定期的な婦人科検診を考慮されてもいいかもしれません。
治療
良性を考える場合は手術をせず、定期的(3~6ヶ月毎)に経過観察する場合もあります。
その場合でも卵巣腫瘍の大きさが6cmを超えるようなものでは、卵巣についている靭帯がねじれて、捻転を起こすことがあります。
その場合は突然の腹痛を起こすことがあります。卵巣への血流が途絶えることで腹痛が起きますが、卵巣の機能を残さないといけない場合では、特に、緊急での手術が必要な場合があります。
手術は今後の妊娠など考慮し決めていきましょう
良性の腫瘍が考えられる場合であっても将来的には癌化する場合もありますので、ライフステージに合わせた治療の選択が必要です。
今後、妊娠を希望されない場合は、良性であっても手術を選択する場合もあります。
悪性も否定できないような検査所見の場合は原則的には手術の選択となります。
手術の方法に関しては手術を希望される医療機関で相談されてください。
今後、妊娠を希望される場合は腫瘍のある卵巣だけを切除する場合や、迅速病理の結果で方針を手術中に決定する場合もあります。
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