当院では、絨毛検査や羊水検査などの診断的な検査も実施しております。
検査によって得られた検体から染色体の変化を検出します。
検査の対象となる方はスクリーニング検査でハイリスクと診断された方や胎児超音波検査で構造異常がみられた方を対象に実施しています。
染色体とはヒトの設計図であるDNAが折り畳まれたものです。
人はそれぞれの細胞の核には、それぞれ2本ずつからなる1番からの22番の常染色体と性染色体の46本を持っています。
染色体の変化について
その染色体の変化には数の変化と構造の変化があります。
- 数の変化
- 本来46本あるはずの染色体の数が増えたり減ったりすることです。
- 2本あるはずの染色体が3本になった場合をトリソミー、1本となった場合をモノソミーと呼びます。
- 構造の変化
- 染色体に切断が生じ、再度、結合するときに生じる構造の変化です。
- 染色体全体で過不足がないものを均衡型、過不足が生じているものを不均衡型と呼びます。
染色体検査
1. Gバンド染色体検査
採取した絨毛及び羊水中にある胎児由来の細胞を培養して染色体の形状と本数を調べることにより、胎児に染色体異常があるかを調べます。
絨毛や羊水中の細胞は少ないため、Gバンド染色体分析をするためには培養して細胞量を増やす必要があります。
細胞が増殖している途中で、染色体の形態特徴が識別できる時期の細胞を選び、酵素と染色液を用いて染色します。
染色された染色体を、顕微鏡を用いて画像撮影し判定を行います。
46本あるべき染色体の数を数えることで、数の変化を確認していきます。
また、染色によって現れたバンドの形状などから、構造の変化があるかどうかを確認していきます。
これらのことにより顕微鏡で捉えられる範囲の変化を確認することができます。
胎児由来の細胞を培養する必要があるため、結果を得るまでに2~3週間程度の時間が必要です。
検査の限界
染色体の数の変化や多くの構造の変化を確認することができますが、顕微鏡ではとらえられない微細な構造の変化や遺伝子レベルの変化は検出することができません。
絨毛細胞や羊水細胞のGバンド解析はバンドレベルが出生後の血液検体よりも劣るため、出生前に正常染色体結果が得られても、出生後に染色体異常が判明することがあります。
一人の胎児が正常な細胞と異常な染色体の細胞の両方を持っている場合をモザイクと呼びます。
培養中に正常細胞ばかり増えてくる場合や、また両方の細胞が増えても正常の細胞しか検出しない場合には、出生後に染色体異常が判明することがあります。
生まれてくる赤ちゃんの病気のうち染色体異常は一部にすぎません。この検査により全ての病気を判断することはできません。
絨毛や羊水を採取して培養しても、細胞が検査可能な量まで増殖せず、結果を報告することができない場合があります。
2. QF-PCR法
採取した絨毛及び羊水中にある胎児由来の細胞からDNAを抽出し、培養せずに胎児に13番、18番、21番染色体そして性染色体に限定して数の変化を調べます。
PCR増幅後に機器で検出されるそれぞれの波形の数や大きさで判断します。
検査のメリット
通常の染色体検査は結果が出るまでに2~3週間の時間を必要としますが、QF-PCRでは数日(一般的には検体が検査会社に到着した翌日)で結果を得ることができます。
検査の限界
QF-PCRでは13番、18番、21番染色体、性染色体に限定して、数の変化を確認することができますが、その他の染色体の数の変化は確認することはできません。
また、全ての染色体において、構造の変化や微細な構造の変化、遺伝子レベルの変化は検出することができません。
一人の胎児が正常な細胞と異常な染色体の細胞の両方を持っている場合をモザイクと呼びます。この検査では低頻度モザイク(20%以下)の判定はできません。
この検査はGバンド染色体検査を補助するための検査です。
その為、採取した絨毛や羊水の量が少ない場合にはGバンド染色体検査の方を優先させるためQF-PCR法が実施できない場合があります。
3. D-karyo検査(デジタル染色体分析)
採取した絨毛及び羊水中にある胎児由来の細胞からDNAを抽出し、培養せずにNGS法(次世代シークエンス法)という技術を用いて数の変化と不均衡型の構造の変化があるかを調べます。染色体の変化を波形として判断します。
Gバンド染色体検査では顕微鏡を用いるため、細胞の種類や増殖能力によってはヒトの目で判断が難しい構造異常は検出できません。
しかし、この技術を併用することで、Gバンド染色体検査で検出限界のボーダーラインとされる様な不均衡型の構造変化を検出することができます。
この検査では結果を得るまでに2~3週間程度の時間が必要となります。
検査のメリット
全ての染色体の数の変化を検出できます。
Gバンド染色体検査で判断が難しいような不均衡型の構造の変化を検出できます。
検査の限界
染色体の数の変化や不均衡の構造の変化の多くは分析できますが、均衡型の構造変化や微細な構造の変化、遺伝子レベルの変化は検出することができません。
一人の胎児が正常な細胞と異常な染色体の細胞の両方を持っている場合をモザイクと呼びます。
この検査では低頻度モザイク(20%以下)の判定はできません。
生まれてくる赤ちゃんの病気のうち染色体異常は一部にすぎません。この検査により全ての病気を判断することはできません。
D-Karyo検査はスクリーニング検査ですので陽性となった場合には、染色体の変化の正確な診断の為、両親を含めたSNP マイクロアレイ解析が必要となります。
※D-Karyo検査についての詳細な情報に関しましては、以下の論文に発表されています。
D-karyo-A New Prenatal Rapid Screening Test Detecting Submicroscopic CNVs and Mosaicism
4. SNP(スニップ)マイクロアレイ検査
DNA量の増減を検出することで、顕微鏡では観察ができない微細な染色体の変化(増減)について明らかにする検査です。
Gバンド染色体検査では10Mb程度の変化を確認することができますが、SNPマイクロアレイでは50-100Kb程度の変化まで確認することができます。
その為、微細な染色体異常まで確認できます。
また、染色体の一部が片親のみに由来する片親ダイソミーの検出も可能であるため、この現象による遺伝疾患の検出が可能となる場合があります。
国際的な学会では、胎児の構造学的な異常がある場合はマイクロアレイを第1選択とするべきとしています。
その為、当院でも超音波検査で構造学的な異常を胎児に認めた場合はSNPマイクロアレイを提示しています。
確認できた変化が、ご両親から引き継がれたものなのかどうかを確認するために、当院では検査を希望された場合、全例に両親を含めたSNPマイクロアレイ検査を実施しています。
結果を得るまでに2‐3週間程度の時間が必要となります。
検査のメリット
全ての染色体の数の変化を検出できます。
Gバンド染色体検査で判断が難しいような不均衡型の構造の変化を検出できます。
片親ダイソミーの検出が可能です。
検査の限界
染色体の数の変化や微細な不均衡の構造の変化までは分析できますが、均衡型の構造変化や、遺伝子レベルの変化は検出することはできません。
確認される染色体変化の中でも、現状では臨床的な重要性がわからないものが見つかる場合があります。
生まれてくる赤ちゃんの病気のうち染色体異常は一部にすぎません。この検査により全ての病気を判断することはできません。
検査料金のご案内
価格は全て税込みとなります。
Gバンド染色体検査 | 165,000 |
---|---|
Gバンド染色体検査 + QF-PCR | 198,000 |
Gバンド染色体検査 + QF-PCR + D-karyo検査 | 253,000 |
QF-PCR + SNPマイクロアレイ(トリオ解析) | 330,000 |
SNPマイクロアレイ 追加 | 198,000 |
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